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この記事の答え
- 登録も宅建士証も任意です。受けなくても罰則はありません(宅建業法18条1項・22条の2第1項は、どちらも「できる」と書かれています)
- ただし「宅地建物取引士」と名乗れるのは、宅建士証の交付を受けた人だけ(2条4号)。履歴書には「宅地建物取引士試験 合格」と書くのが正確です
- 急ぐ理由はひとつだけ。合格から1年を過ぎると、宅建士証をもらうのに法定講習が要ります(22条の2第2項)
→ 登録に進むと決めたなら合格から開業までにかかる費用と期間/実務経験が2年ない人は登録実務講習の選び方へ
私は行政書士として宅建業の免許申請を扱い、自分でも宅建に受かって登録しました。この記事の制度の部分は、宅地建物取引業法と同法施行規則の条文をe-Govで直接確認して書いています(確認日は末尾の出典に)。
「合格」「登録」「宅建士証」は、別のもの
まずここが整理できていないと、どの記事を読んでも噛み合いません。宅建は3段階あります。
- 試験に合格するこの時点の呼び名は「宅地建物取引士資格試験の合格者」。まだ取引士ではありません
- 都道府県知事の登録を受ける実務経験2年以上、または登録実務講習の修了が要ります(18条1項・施行規則13条の15、13条の16第1号)
- 宅建士証の交付を受けるここで初めて「宅地建物取引士」になります(2条4号)
条文はこう書かれています。「宅地建物取引士 第二十二条の二第一項の宅地建物取引士証の交付を受けた者をいう。」(宅建業法2条4号)。つまり法律上の「宅地建物取引士」は、カードを持っている人のことです。
そして2も3も、条文は「受けることができる」「申請することができる」です。義務ではありません。合格したまま何もしなくても、法律上は何の問題もありません。
履歴書には何と書けるか
いちばん多い悩みはこれだと思います。段階ごとに、書ける言葉が変わります。
| いまの段階 | 履歴書の書き方 |
|---|---|
| 合格しただけ | 宅地建物取引士資格試験 合格 |
| 登録まで済んだ | 宅地建物取引士資格登録(○○県知事 第○○号) |
| 宅建士証も受けた | 宅地建物取引士 |
履歴書の書き方そのものを定めた法令はありません。上の表は、2条4号の定義(宅建士証の交付を受けた者が宅地建物取引士)から逆算した整理です。法令として言えるのは「合格しただけの人は、法律上の宅地建物取引士ではない」ということだけで、だから「宅地建物取引士」とだけ書くと事実と違ってしまう、という話です。
採用する側から見ると、「合格」でも十分に意味があります。宅建士証が要る仕事(重要事項の説明など)に就くなら、入社後に会社が登録費用を出してくれることも珍しくありません。隠さずに「合格」と書いて、面接で「登録はこれからです」と言えばいいというのが、私の実感です。
名乗ること自体を禁じる規定は、宅建業法にはない
ここは誤解が多いところです。宅地建物取引業法の全条文を検索しましたが、「宅地建物取引士でない者は、その名称を用いてはならない」という規定は見当たりませんでした。名称の使用を制限している75条は、宅地建物取引業協会の名称についての条文です。
行政書士や税理士のような名称独占の規定と罰則が、宅建士にはないということです。だからといって名乗っていいわけではありません。2条4号の定義に反するので、事実と違うことを言っていることになります。仕事の場面では、経歴を偽ったという評価につながります。

登録しないと、できないこと
宅建士証がないと、法律が「宅地建物取引士にさせなければならない」と定めている仕事ができません。代表的なのは次の2つです。
- 重要事項の説明——業者は契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして説明させなければならない(35条1項)
- 37条書面への記名——業者は交付する書面に、宅地建物取引士をして記名させなければならない(37条3項)
逆に言えば、この2つに関わらない働き方なら、登録しなくても実務は回ります。賃貸の管理、事務、営業の同行、広告の作成。実際、合格したまま登録していない人は珍しくありません。
ただし資格手当は「宅建士証の提示」を条件にしている会社が多いので、そこは就業規則を確認してください。手当が月1万円なら年12万円で、登録費用(約6万円。内訳はこちら)は半年で回収できる計算になります。
急ぐ理由は「合格から1年」だけ
放置してもいい、と書きました。ただし1年の壁だけは知っておいてください。
宅建士証の交付を受けようとする人は、申請前6か月以内に行われる法定講習を受けなければなりません(22条の2第2項本文)。ところが同じ条文のただし書に、こう書かれています。「試験に合格した日から一年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者……については、この限りでない。」
合格から1年以内に宅建士証まで進めば、法定講習は要りません。1年を過ぎると、登録するたびに講習の時間と費用が上乗せされます(沖縄県の例で16,500円。中身は法定講習の記事に)。
迷っているなら、「1年以内に取るか、当面は取らないか」の二択で考えるとすっきりします。中途半端に半年後、がいちばん損です。
なお実務経験が2年ない人は、その前に登録実務講習が要ります。こちらは修了証が長く使えるので、登録するかどうか決めていなくても、講習だけ先に済ませておく手はあります(20機関の選び方)。

合格そのものに、期限はあるのか
「何年も放置したら合格が消えるのでは」と心配する人がいます。
登録を消す場面を定めた22条を読むと、消除の事由は①本人が申請したとき ②死亡等の届出があったとき ③届出はないがその事実が判明したとき ④不正受験などで合格の決定が取り消されたときの4つです。「一定期間が過ぎたら」という事由は書かれていません。
条文を読んだ限り、合格の効力に期間の定めを置いた規定は見当たりませんでした。「一生有効」と断言する条文があるわけではなく、失効させる規定がない、という言い方が正確です。
期限があるのは合格ではなく、宅建士証の有効期間5年のほうです(22条の2第3項)。こちらは更新しないと失効します。
引っ越しや転職をしたら
登録は、試験を行った都道府県知事のもとにあります。他の都道府県の事務所で働くことになったときは、登録の移転を申請することができます(19条の2)。これも「できる」=任意です。
注意点がひとつ。登録の移転があると、それまでの宅建士証は効力を失います(22条の2第4項)。ただし移転の申請と同時に交付を申請すれば、前の宅建士証の残りの期間を有効期間とする新しい証が交付されます(同5項)。同時に出すのが得です。
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まとめ
- 登録も宅建士証も任意。しなくても罰則はない(18条1項・22条の2第1項)
- 「宅地建物取引士」は宅建士証の交付を受けた人のこと(2条4号)。合格だけの段階では、履歴書に「試験 合格」と書く
- 名乗ることを禁じる規定と罰則は、宅建業法には見当たらない。ただし事実と違う
- 登録しないとできないのは、重要事項の説明(35条1項)と37条書面の記名(37条3項)
- 急ぐ理由は「合格から1年」。過ぎると法定講習が要る(22条の2第2項)
- 合格の効力を期間で失わせる規定は、条文に見当たらない
登録に進むなら、費用と期間の全体像は合格から開業までの記事に。実務経験が2年ない人は登録実務講習の記事へ。資格を活かして動くつもりなら転職の記事もどうぞ。
よくある質問
宅建に受かったあと、登録しないと罰則はありますか?
ありません。宅建業法18条1項は「登録を受けることができる」、22条の2第1項は「交付を申請することができる」と定めていて、どちらも義務ではありません。合格したまま何もしなくても法律上の問題はありません。
登録していない場合、履歴書には何と書けばよいですか?
「宅地建物取引士資格試験 合格」と書くのが正確です。法律上の「宅地建物取引士」は宅建士証の交付を受けた人を指すため(宅建業法2条4号)、合格しただけの段階で「宅地建物取引士」と書くと事実と違ってしまいます。なお履歴書の書き方そのものを定めた法令はありません。
合格してから何年も経ちましたが、まだ登録できますか?
条文を読んだ限り、合格の効力に期間の定めを置いた規定は見当たりません。ただし合格から1年を過ぎて宅建士証の交付を受ける場合は、申請前6か月以内の法定講習が必要になります(宅建業法22条の2第2項)。
出典(2026年9月10日確認)
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)2条4号(宅地建物取引士の定義)、18条1項(登録)、19条の2(登録の移転)、22条(申請等に基づく登録の消除)、22条の2(宅地建物取引士証の交付等・有効期間5年・法定講習と1年以内の例外)、22条の3(有効期間の更新)、35条1項(重要事項の説明)、37条3項(書面への記名)、75条(名称の使用制限=協会の名称)——e-Gov法令検索の条文
- 宅地建物取引業法施行規則13条の15(実務の経験の期間=2年)、13条の16第1号(登録実務講習の修了)——e-Gov法令検索の条文
- 「宅地建物取引士でない者」の名称使用を制限する規定の有無は、同法の全条文を検索して確認(該当なし)
本記事は宅地建物取引業法とその施行規則の条文を整理したものです。履歴書の書き方は法令ではなく慣行にあたるため、応募先の指定がある場合はそちらに従ってください。登録の手続きと費用は都道府県によって異なります。申請の前に、登録先の都道府県の最新の案内を必ずご確認ください。
この記事に出てくる人森 ひなた(24・福岡/賃貸仲介の営業アシスタント。24歳で宅建に挑む) 鈴木 秀樹(45・静岡/45歳で宅建に一発合格。登録実務講習の最中)
14人の紹介は登場人物にまとめています(記事を読みやすくするための架空の人物です)。
