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この記事の答え
- 登録の移転は、ほかの都道府県にある宅建業者の事務所で働くときに申請できる手続きで、任意です(宅建業法19条の2)。引っ越しただけでは移転できません
- 住所や勤務先が変わったときに要るのは変更の登録で、こちらは義務です(20条)。働いている宅建業者も登録簿に載る事項です(施行規則14条の2の2)
- 移転と同時に宅建士証を申請すれば、前の証の残りの期間を引き継いだ新しい証が出て、法定講習は要りません(22条の2第2項ただし書・第5項)
→ 宅建士証の5年ごとの更新は法定講習の記事/まだ登録していない人は登録しないとどうなるか/他県の会社に移るなら転職の記事へ
私は行政書士として宅建業の免許申請を扱い、自分でも宅建に受かって登録しました。この記事の制度の部分は、宅地建物取引業法と同法施行規則の条文をe-Govで直接確認して書いています(確認日は末尾の出典に)。
登録の移転とは:ほかの県の業者で働くときの手続き
宅建の登録は、試験を受けた都道府県の知事のもとにあります(18条1項)。千葉で受ければ千葉県知事、福岡で受ければ福岡県知事の登録です。その登録を、働く場所の都道府県に移すのが「登録の移転」です。
第十八条第一項の登録を受けている者は、当該登録をしている都道府県知事の管轄する都道府県以外の都道府県に所在する宅地建物取引業者の事務所の業務に従事し、又は従事しようとするときは、当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事に対し、当該登録をしている都道府県知事を経由して、登録の移転の申請をすることができる。
宅地建物取引業法 第19条の2(本文)
- いつ申請できるかいま登録している都道府県以外にある、宅建業者の事務所で働く(働こうとする)とき
- 誰に申請するか働く事務所がある都道府県の知事。ただし書類はいま登録している知事を経由して出す
- しなければならないか「申請をすることができる」=任意。移転しないことに罰則はない
ただし書で、事務の禁止の処分を受けてその期間が終わっていない人は、移転を申請できないとされています。
引っ越しただけでは、移転できない
ここがいちばん誤解されやすいところです。条文の要件は「宅地建物取引業者の事務所の業務に従事し、又は従事しようとするとき」で、住所がどこにあるかは要件に入っていません。
| こんなとき | 登録の移転 | 変更の登録 |
|---|---|---|
| 引っ越した(勤務先はそのまま) | できない | 必要(住所) |
| 同じ県の中で、別の宅建業者に転職した | できない | 必要(勤務先) |
| ほかの県の宅建業者に転職した | できる(任意) | 勤務先が変わるので対象になる。移転を申請する場合の扱いは、窓口の案内で確認 |
| 宅建業には就いておらず、引っ越した | できない | 必要(住所) |
たとえば千葉で登録している人が東京へ引っ越しても、千葉の会社に通い続けるなら移転はできません。逆に、千葉に住んだまま東京の会社に移るなら、移転を申請できます。基準は「どこに住むか」ではなく「どこの業者で働くか」です。

変更の登録:こちらは義務
第十八条第一項の登録を受けている者は、登録を受けている事項に変更があつたときは、遅滞なく、変更の登録を申請しなければならない。
宅地建物取引業法 第20条
移転と違って「しなければならない」です。対象になる「登録を受けている事項」は、法律と施行規則で決まっています。
- 氏名・生年月日・住所(18条2項)
- 本籍(外国籍の人は国籍)・性別(施行規則14条の2の2第1項1号)
- 試験の合格年月日・合格証書番号(同2号)
- 宅建業者で働いている人は、その業者の商号または名称と免許証番号(同5号)
最後の項目があるので、同じ県の中で転職しても変更の登録が要ります。申請書はいま登録している都道府県の知事に出します(施行規則14条の7第1項)。
宅建士が氏名または住所を変えたときは、変更の登録とあわせて、宅建士証の書換え交付も申請しなければなりません(施行規則14条の13第1項)。
住所だけの変更なら写真は要らず、いまの証の裏面に新しい住所を書く方法でも構わないとされています(同2項ただし書・3項ただし書)。
移転と変更の登録、違いを一枚で
| 登録の移転 | 変更の登録 | |
|---|---|---|
| いつ | ほかの県の宅建業者の事務所で働く(働こうとする)とき | 登録事項(住所・氏名・本籍・勤務先など)が変わったとき |
| しなければならないか | 任意(できる) | 義務(遅滞なく) |
| 誰に出すか | 移転先の知事へ、いまの知事を経由 | いまの知事 |
| 宅建士証 | 移転すると失効。同時に申請すれば残り期間で新しい証 | 氏名・住所の変更なら書換え交付が必要 |
| 根拠 | 19条の2・22条の2第4項/第5項 | 20条・施行規則14条の7/14条の13 |
宅建士証はどうなるか
宅建士証を持っている人が移転すると、いまの証は効力を失います(22条の2第4項)。
ただし、移転の申請と一緒に証の交付を申請すれば、移転後の知事は「前の証の有効期間が経過するまでの期間」を有効期間とする証を交付しなければなりません(同5項)。つまり新しく5年に戻るわけではなく、残りの期間を引き継ぎます。そしてこの交付には、法定講習が要りません(同2項ただし書)。
移転だけ先に済ませて証を申請しなかった場合、手元の証は失効したままです。あとから別に交付を申請すると「移転の申請とともに」ではなくなるので、5項の扱いにはなりません。その場合は通常の交付申請になり、試験の合格から1年を過ぎていれば、申請前6か月以内の法定講習が必要になります(同2項本文)。
移転申請書と交付申請書はあわせて提出し(施行規則14条の10第3項)、新しい証はいまの証と引き換えに受け取ります(同14条の14)。法定講習の中身と費用は更新の記事にまとめています。
申請書に書くこと
登録移転申請書の記載事項は、施行規則14条の5第1項に並んでいます。
- 氏名・生年月日・住所・本籍(外国籍の人は国籍)・性別
- いまの登録番号
- いま登録している都道府県知事
- 移転を必要とする理由
- 移転後に働く(働こうとする)宅建業者の商号または名称と免許証番号
写真は申請前6か月以内に撮った、無帽・正面・上三分身・無背景の縦3cm×横2.4cmを貼ります(同2項)。様式は別記様式第六号の二です(同3項)。移転が済むと、知事から本人と移転前の知事に通知が届きます(施行規則14条の6)。
手数料や添付書類の細部は、法律ではなく都道府県の側で決まっています。書類は「いま登録している知事を経由」して出すので、まずいま登録している都道府県の窓口の案内を確認してください。

移転する理由は「窓口が変わる」こと
法律に「移転のメリット」が書いてあるわけではありません。条文から言えるのは、手続きの出し先です。
- 変更の登録は「その者の登録をしている都道府県知事」に出す(施行規則14条の7第1項)
- 宅建士証の交付の申請も「登録をしている都道府県知事」に出す(22条の2第1項)
つまり移転すれば、こうした手続きの窓口が、働いている都道府県になります。移転しなければ、窓口は試験を受けた都道府県のままです。どちらを選んでも、法律上の義務違反にはなりません。
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まとめ
- 登録は試験を受けた都道府県の知事のもとにある(18条1項)
- 登録の移転は、ほかの県の宅建業者の事務所で働くときに申請できる。任意(19条の2)
- 引っ越しただけでは移転できない。基準は住所ではなく、働く業者の所在地
- 住所・氏名・本籍・勤務先が変わったら変更の登録。こちらは義務(20条・施行規則14条の2の2)
- 宅建士証を持つ人が氏名・住所を変えたら、書換え交付も必要。住所だけなら裏面に書く方法でもよい(施行規則14条の13)
- 移転すると証は失効。同時に交付を申請すれば残り期間の証が出て、法定講習は不要(22条の2第4項・第5項・第2項ただし書)
宅建士証の5年ごとの更新は法定講習の記事に、まだ登録していない段階の話は宅建に受かって登録しないとどうなるかにまとめています。
よくある質問
引っ越したら、宅建の登録の移転が必要ですか?
いいえ。登録の移転は、ほかの都道府県にある宅建業者の事務所で働くときに申請できる手続きで、引っ越しただけでは申請できません(宅建業法19条の2)。住所が変わったときは変更の登録を申請し(20条)、宅建士証を持っている人は書換え交付も申請します(施行規則14条の13)。
宅建士の登録の移転は義務ですか?
義務ではありません。宅建業法19条の2は「登録の移転の申請をすることができる」と定めています。一方で、住所や勤務先など登録している事項が変わったときの変更の登録は、20条で「申請しなければならない」とされています。
登録を移転すると、宅建士証の有効期限はどうなりますか?
移転するといまの宅建士証は効力を失います。移転の申請と同時に交付を申請すれば、前の証の有効期間が終わるまでの期間を有効期間とする新しい証が交付され、この交付には法定講習が要りません(宅建業法22条の2第4項・第5項・第2項ただし書)。
出典(2026年9月14日確認)
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)18条(登録・登録簿)、19条の2(登録の移転)、20条(変更の登録)、22条の2(宅地建物取引士証の交付等・移転による失効と残存期間の証・法定講習の例外)——e-Gov法令検索の条文
- 宅地建物取引業法施行規則 14条の2の2(登録簿の登載事項)、14条の5(登録移転申請書)、14条の6(登録の移転の通知)、14条の7(変更の登録)、14条の10(交付の申請・移転とあわせた提出)、14条の13(書換え交付)、14条の14(移転に伴う交付)——e-Gov法令検索の条文
本記事は宅地建物取引業法とその施行規則の条文を整理したものです。手数料・添付書類・受付窓口は都道府県によって異なり、条文には書かれていません。申請の前に、いま登録している都道府県の最新の案内を必ずご確認ください。
この記事に出てくる人松本 千夏(36・千葉/宅建に受かって、事務職から営業へ転職した) 高橋 亮(37・札幌/量販店の店長から、不動産会社へ転職した)
14人の紹介は登場人物にまとめています(記事を読みやすくするための架空の人物です)。
